初動の始まり
日差しが強く、時折、吹いてくる風は寒さを感じる中、
金木犀の甘い匂いが更に季節感を感じさせる、
秋の連休の最終日、
連休最終日と合って、学校行事が行われる所もあり、
金木犀の匂いと共に、微かに音楽も流れて来る。
時折途切れる音楽を聴きながら、
何かを思い出した様にフッと空を見上げた。
「サッカーに興味あるの?プレーするの?」
頭に叩き込む様に読んでいる中、
いきなりの言葉に、
「お、弟がサッカーしていて時々練習相手をしてるんです」
急に話し掛けられた驚きと警戒心を隠す事が出来ず、
表情と態度、言葉に出すと何かを思い出したのか、
「あのさ、もしかして公園で練習してた?」
確認する為に作られた言葉に
「それがなにか?」
警戒心が増し、声を硬く返せば
「いや、別に深い意味は無くて・・・・
その、昨日犬のサンポの時に見かけて・・・」
気まずいのか、視線を泳がし作る言葉に
「そうですか。
あの、本、返して貰えますか?」
頷く事もせず、模範的な言葉で返した。
暑く、刺す様な日差す午後の図書館で、
初めて顔を見合わせ、話をした。
あの日から、時折視線を感じ振り向き見る先も、
時折、弟とサッカーをしているのも、
同級生であった、
山口圭介
だった。
あれから2年
初めて話した時は受験生だったが、
今では高校生になり、お互い違う高校へと進学をした。
共学校と女子高
活躍が聞こえてくる山口とは違い、
は平凡に暮らしていた。
開けていた窓から入ってくる風に誘われる様に、
近くに合ったカバンを手に持ち、外へと出る。
お昼も過ぎ、すれ違う人達は住宅地へと入って行く。
後、1時間もしない内に水色の空は、
オレンジ色に変え、藍色へと色を染める。
何も考えずに歩き、腰を下ろしたのは、
いつもの公園のベンチ
サッカーをしている弟を待っている、この場所は、
いつの間にか、心地よい場所となり
カバンの中に入ってる本を取り出し読み始める。
が、数ページ読んだ後にため息を落とし、本を閉じた。
読み上げたばかりと言う事もあったが、
集中力が無くなったのか、閉じた本を膝の上に置き、
下げていた視線をまっすぐにすれば、
遊具の間にオレンジ色に染まった空が見れる。
ゆっくりと変化する空を見つめ続ける。
夕日に染められ、オレンジ色に染まるが、
ゆっくりと、藍色が染め始めると1番星が輝く。
オレンジと藍の間は、言葉では表現できない色の中
夢中で見ていると、空はすっかり藍色になり、所々に星の輝きも見える。
あっという間の変化だった。
数十分の空の変化も、
に取っては数秒のイリュージョンだった。
空が、こんなにも綺麗だったなんて・・・
視線の先で輝き続ける星を見つめ、
先程見た夕焼けを思い出す。
良いものを見れたなぁ・・・
微笑み、膝に置かれた本を手にした時、
近くに人の気配を感じ、ゆっくりと首を動かすと、
青いジャージを着た山口圭介が立っていた。
なぜココに?
内心、そんな言を思うが表情には出さず見続けると
「歩いてたら、さんが見えたから・・・
それで、どうしたのかと思って・・」
必死に言葉を探しだし、音に出す姿を見ながら
少しイスから腰を浮かし、隣に座れる様に空ければ、
「ありがとう。
ごめんな」
申し訳無さそうに、礼と誤りを入れ、腰を下ろした。
お互い、話す事が無いのか無言で時を過す中、
「あ、あのさ。
今日俺の学校、文化祭だったんだ」
沈黙に耐え切れず、必死に探し出した話題を話し始めだす。
「それで・・・
コレなんだけど・・」
白いビニール袋から出し、に差し、
「俺のクラスで屋台をやったんだ。
それの、あまりなんだけど良かったら」
テレながら差し出すモノを受け取り、見れば、
焼きそばが、はみ出す程入っていた。
「・・・有り難うございます」
いきなりの事に呆然と礼を言えば、
割り箸が差し出され、食事が始まった。
冷えてしまった焼きそばを食べると、
何度か視線を感じ、手を止め隣を見
「美味しいです」
ありふれた感想を述べると
「良かった!
これ、俺が作ったんだ」
どこか不安そうだった表情が一気に無くなり、
テレ、笑いながら、
「試合から帰ってきたら、文化祭をしてるからこい!
て、メールが着てさ。それで行ってみたんだけど、
もう終わりがけで、材料が余ったから、皆の持って買える分を作れ。
て、クラスの奴らに言われて、作ったヤツなんだ」
野菜の少ないし、青海苔は無いしで焼きそばらしくないんだけどさ!
勢い良く話される言葉に、頷く事も出来ず聴いていると
大きな荷物の中に、紙袋を見つけた。
綺麗にラッピングされたモノが入っていた。
「さん?」
尚も話し続けていたが、自分に向けられているはずの視線が
違う所を見ていて、名を呼ぶが、
「誕生日だったんですか?」
話していた内容とは違う言葉に、
一瞬、言われた言葉が理解できず戸惑うが、
の視線の先が解り、
「昨日、誕生日だったんだ」
苦笑しながらの言葉に、
視線を圭介に戻し、
「おめでとうございます」
祝いの言葉を言う。
が、
「ありがとう」
どこか苦しそうな表情で礼を返す。
「あの・・
関係無い話をしても良いですか?」
変わらない表情で作られて言葉に、
戸惑いながらも頷くと、
「山口さんが、無事に帰って来てくれた方が嬉しいだと思います」
真剣な表情で話しを始めた。
「試合に勝った、負けたは大切かもしれません。
でも、怪我も無く、元気に帰って来てくれて嬉しいです」
視線を合わせ、尚も話は続く
「目標としていた事が達成出来なくて、悔しいかもしれません。
でも、決勝までに何度も試合をして、負けてしまったチームも
もしかすると、今度こそ・・
そう、目標を持って試合をして負けてしまったのかもしれない。
悔しいのは皆、一緒だと思います。
違うのは、その後どうするか、じゃないでしょうか」
ゆっくりと紡がれた言葉を呆然と聞いていた圭介は、
の声が聞こえなくなると意識を戻した。
「知ってたんだな・・・」
零れ落ちる言葉に
「はい」
力強く頷く。
「そっか・・
なんかカッコ悪い所を見せちまったなぁ」
と合わせていた視線を空へと向け、
口端を吊り上げた。
笑っているのか、怒っているのか、
横顔では、判断が出来なかった。
が、
「そんな事ないです」
見上げられた横顔から、手に持っていた焼きそばへと変え、
「真剣にやっている人に
カッコ良いとか、カッコ悪いとか、
関係ないと思います」
焼きそば、ありがとうございました。
ふたを閉め、付いていた輪ゴムを止め、
カバンの中から出したハンカチで包み、カバンの中へと入れると
ベンチから立ち上がり、出口へと向かって歩き出した。
「え?
ちょ・・待って、さん」
いきなりの行動に意識が追いつけず、
慌てて後を追い、
「遅いから、送ってくよ・・・」
小走りに近づき、横に付き言葉を言うが
は返事も頷きもしなかった。
言葉も無く、無言で歩く。
何十個目の街灯を通りすぎ、
良く似た感じの家が続く中、
歩いていたの足が止まり、
「少し、待っていて頂けますか?」
圭介の返事を待たず、家の中に入り、
再び圭介の下へ近づくと
「今度、学校で文化祭があるんです。
もし、宜しければお友達と来て下さい」
色画用紙に印刷されただけの、チケットを差し出す。
「いや、でも・・・」
躊躇する圭介に
「焼きそばのお礼です」
私、何も返せるものを持っていませんので・・・
申し訳無さそうに、苦笑するに
「じゃぁ・・・」
ゆっくりと、差し出されているチケットを受け取る。
「なんだか、気を使わせちまったみたいで・・・」
空いている手が頭を掻き、申し訳なさを現すが
「いえ、送ってくださってありがとうございます」
何度目かの礼を言い、玄関へと向かい、
「今日は本当にありがとうございました。
お休みなさい」
小さな笑みと柔らかな言葉を残し、
家へと入って言った。
「礼を言わなきゃならないのは、俺の方だ・・」
見送った、圭介が玄関を見ながら呟く。
関係ない話と言いながらも、ドコも関係無くなかった。
無理している様に見えたのだろうか?
いつまでも、人の家の前に居る事をせず、
我が家へと歩く。
『カッコ良いとか、カッコ悪いとか、
関係ないと思います』
気になる子の前では、カッコ付けたい。
自分だけを見てもらいたいから・・・
試合を知っていたと言う事は、覚えてくれていたと言う事だろうか?
落ち込んでいた気持ちが上がっていく。
良い様に誤解してしまいたくなる。
手に持っているチケットに視線を落とし、思う。
次に期待してもいいだ。